テラ・アニマの物語へ、ようこそ。 前回は、己の肉体と精神を極限まで鍛え上げる、ストイックな求道者「くまモンク」の物語をお届けしました。彼が、光の当たる場所で己の「強さ」を追求する者であるならば、今回ご紹介するキャラクターは、その正反対。決して表舞台に立つことなく、影の中から己の「技」を極めし者です。
シリーズ第十八話の主役は、ヒノモト皇国の静かなる守護者――**忍びの「ホークアイ」**です。
その瞳は、すべてを見通す
歴史の記録に、彼の名が記されることはありません。 戦の勝敗を左右する重要な情報を届けたのも、国家を揺るがす陰謀を未然に防いだのも、すべては闇の中。ホークアイは、誰に知られることも、賞賛されることもなく、ただ影の中から国を支える、忍びの一族の若き頭領です。
感情を殺し、気配を消し、任務を遂行する。それが、彼に課せられた宿命。 その鷹のように鋭い瞳は、どんな暗闇の中でも、遥か遠くの標的を正確に捉えることができます。しかし、彼が本当に見つめているのは、標的そのものだけではありません。人々の動き、街の空気、風の匂い…彼は、その場に存在するすべての情報から、誰も気づかない「真実」のかけらを拾い集めているのです。
「無」になるための、過酷な掟
彼が生まれた忍びの里の掟は、ただ一つ。「感情を捨て、無になること」。 喜びも、悲しみも、怒りさえも、任務の遂行を妨げる雑音でしかない。そう叩き込まれて育った彼は、幼い頃からずば抜けた才能を発揮しました。特に、その驚異的な視力と、一度見たものを決して忘れない記憶力は、彼を里始まって以来の天才と言わしめるに十分でした。
しかし、皮肉なことに、そのあまりにも優れた瞳は、感情を捨て去るには、世界のあらゆる物事を「面白く」捉えすぎてしまったのです。
影の中の、ささやかな愉しみ
もちろん、彼は任務中に笑ったり、驚いたりすることはありません。しかし、彼の心の奥底には、誰にも知られていない、ささやかな愉しみがあります。
それは、任務の合間に見つける、奇妙で、滑稽で、愛おしい「人間の営み」を観察すること。 市場で繰り広げられる夫婦喧嘩、恋の悩みを抱える若者のぎこちない仕草、茶屋で団子を頬張る武骨な拳法家（くまモンク）の幸せそうな顔。 それらは、彼が捨て去ったはずの「感情」を思い出させ、同時に、自分が守っている世界の彩りを教えてくれます。彼にとって、この人間観察こそが、過酷な忍びの生を支える、唯一の秘密なのです。
光と影の、プロフェッショナルな関係
そんな彼が、唯一その実力を認め、対等な協力関係を結んでいるのが、ヒノモトの光の象徴、**忠犬サムライ「シバマル」**です。 シバマルが表舞台でその正義の剣を振るう時、その裏には、必ずホークアイがもたらした正確無比な情報があります。二人の間に、個人的な会話はほとんどありません。しかし、シバマルはホークアイの情報を絶対的に信頼し、ホークアイは、シバマルの揺るぎない義の心が、自分たちの暗躍を正当なものにしてくれると信じています。光と影、二人が揃って初めて、ヒノモトの平和は保たれているのです。
感情を殺したはずの瞳で、誰よりも世界の面白さを見つめているホークアイ。彼の物語、いかがでしたでしょうか。
さて、そんな彼を、さらに後ろから、興味津々な瞳で観察している者がいます。 次回は、どんな相手ともすぐに打ち解ける、コミュニケーションの天才！ **ものまね「パロットマイム」**の物語。彼がホークアイを観察する、その理由とは…？
どうぞ、お楽しみに！
