テラ・ア_マの物語へ、ようこそ。 前回、レオたち一行は、絶望の淵にいた「カナリアン」と「フラミン」を救出することに成功しました。二人の芸術家の力が加わり、パーティは8人という大きな力となって、魔王軍の第一砦「氷結の牙」を打ち破ったのです。
しかし、砦が崩れ落ちた後、彼らの目の前に現れた光景に、誰もが言葉を失いました。
絶望の壁、「ワールド・フロスト」
それは、もはや「壁」と呼べるような代物ではありませんでした。 地平線の彼方から彼方まで、天を衝くかのようにそびえ立つ、巨大すぎる氷の絶壁。アルマジロラクルの予言にあった「凍てついた大地」の、本当の姿でした。
「…冗談だろ…」 フェネックが、乾いた笑いを漏らします。
「ボクの槍でも、あんなもの…!」 誇り高きリルドラでさえ、その圧倒的な威圧感に気圧されています。
「飛んで超えられないか?」 レオが問うと、クロネコウィッチが首を横に振りました。 「無理だね。壁の上空は、呪いの魔力が嵐となって吹き荒れてる。近づいた瞬間に、凍りついておしまいさ。壁そのものからも、魔力を吸い取られる…これは、進軍を防ぐ『砦』じゃない。世界を分断する『結界』だ」
その言葉通り、壁はただの氷ではなく、あの「黒い氷の欠片」と同じ、不吉で冷たい呪いのオーラを放ち続けています。
「どうするんだよ、レオ。これじゃ、一歩も先に進めないぜ」 コンすけが、初めて弱音とも取れる言葉を口にします。 8人の仲間が揃い、反撃の狼煙を上げたはずの一行は、絶対的な「拒絶」の壁を前に、立ち往生してしまいました。
吹雪の中の、不動の影
北の地の、陽も差さない凍てつく荒野で、一行は焚き火を囲み、為す術もなく時間だけが過ぎていきました。
その時でした。 「…誰か、来る」 アルパカメイジが、何かの気配を感じ取りました。
猛烈な吹雪の中、皆が武器を構えます。しかし、現れたのは魔物の軍勢ではありませんでした。 たった一人。 分厚い毛皮をまとった、大柄な獣人が、まるで散歩でもするかのように、平然と吹雪の中から歩いてくるのです。
「ヒノモトの者か…!?なぜ、こんな場所に!」 レオが驚きの声を上げます。その姿は、ヒノモト皇国に伝わる、山寺で修行を積むという「拳僧」のものでした。
「…あんた、まさか…!」 レオの隣で、コンすけが、かつてアストリアの書物で読んだ、ある人物の名を思い出していました。 「ヒノモトの山寺で、己の肉体と精神の極致を求めるという…拳法家『くまモンク』!」
乱れた「気」を追う者
その大柄な拳法家――くまモンクは、8人のパーティを一瞥すると、興味なさそうに視線を外し、ただ目の前の「氷壁」だけをじっと見据えました。
「…この壁の向こうか。世界の『気』を乱す、大元の歪みは」
「『気』だと…?」 レオの問いに、くまモンクは初めて口を開きました。 「我は、魔王にも呪いにも興味はない。ただ、己の修行のため、世界の『気』の流れを読み、その理(ことわり)を追って旅をしている」
彼は、ヒノモトの山寺での瞑想中、テラ・アニマ全体の「気」の流れが、北の地で巨大な何かに堰き止められ、凍りつかされていく異常な感覚を察知したと言います。
「この壁は、ただの氷ではない。魔力だけでもない。それは、世界中の生命から吸い上げた『気』を、悪意で凍らせた結晶だ。故に、剣や魔法では砕けぬ」
「じゃあ、どうやって…!」 レオが詰め寄ると、くまモンクはゆっくりと壁の一点を指差しました。
「…しかし、どんなに巨大な流れも、必ず『淀み』が生じる。どんなに強固な鎧にも、わずかな『隙間』がある。この壁にも、唯一、『気』の防御が薄い、破壊可能な一点…『経絡』が存在する」
絶望的な壁を前に、突如として現れた、謎の求道者。 彼は敵なのか、味方なのか。 そして、彼だけが見つけたという、壁を打ち破る唯一の「一点」とは。 レオたちの運命は、このストイックすぎる拳法家の、重い一撃に託されようとしていました。
次回、「異世界転生キャラたちの冒険 第10話:一点突破!求道者の拳」 8人の仲間の力を結集し、くまモンクと共に、絶望の壁に風穴を開けろ! どうぞ、お楽しみに!

