テラ・アニマの物語へ、ようこそ。 前回、レオたち一行は、誇り高き竜騎士「リルドラ」を新たな仲間に加え、ついに「呪い」の源流である北の地へと足を踏み入れました。
大森林エルドリアを抜けた先。そこは、生命の息吹が感じられた森とは対照的な、荒涼とした凍てつく大地でした。 肌を刺すような冷たい風が吹き荒れる中、一行の視線の先には、地平線の彼方まで続く、巨大な「壁」がそびえ立っていました。
魔王軍の第一砦「氷結の牙」
「…あれは、自然の氷壁じゃない。魔力で築かれた、城壁だ」 パーティの最後尾で、クロネコウィッチが忌々しげに呟きます。
彼女の言う通り、それはアルマジロラクルの予言にあった「影の城」そのものではなく、魔王の領域への入り口を守る、巨大な「砦」でした。 壁全体が、あの「黒い氷の欠片」と同じ、不吉で冷たい魔力を放っています。
「チッ…ご大層な門構えだ。あんなもの、ボクの槍で…!」 新入りのリルドラが息巻きますが、コンすけがそれを制します。 「無謀だ、竜騎士殿。あの規模の城壁だ。上空には強力な魔法障壁が張られている。正面から突っ込んでも、体力を消耗するだけだぞ」
「コンすけの言う通りだ」とレオ。「まずは斥候を出す。フェネック、コンすけ、頼めるか。どこかに、侵入できそうな経路が…」
レオが言い終わる前に、フェネックはすでに駆け出していました。 「言われなくても!お宝の匂いはしないけど、トラブルの匂いはプンプンするぜ!」
風が運ぶ、切ないメロディー
残されたレオたちが、砦から距離を置いた岩陰で作戦を練っていると、凍てつく風に乗って、かすかな音が運ばれてきました。
それは、歌でした。 悲しく、美しく、聞く者の心の奥底にある、切ない記憶を呼び覚ますような、魂を揺さぶる歌声です。
「この歌声…」 アルパカメイジが、胸を押さえて目を見開きます。 「私、この歌を知っています…。アストリアの都で一度だけ聞いたことがある。城を飛び出した伝説の宮廷音楽家…まさか!」
その時、斥候に出ていたフェネックとコンすけが、険しい表情で戻ってきました。 フェネックが、珍しく声を潜めて言います。 「…レオ、最悪だ。砦の中央広場に、見張り塔を兼ねた大きな檻が吊るされてた」
コンすけが、その言葉を引き継ぎます。 「歌声の主は、あの檻の中だ。間違いない。あの吟遊詩人、**歌うたい『カナリアン』**だ」
最悪の舞台で、再会した二人
「カナリアンが捕まっている…!?」 アルパカメイジが息を呑みます。
「それだけじゃない」 フェネックは、さらに苦々しい表情で続けました。 「檻は、もう一つあった。カナリアンの檻の隣で、兵士たちの見世物にされて、無理やり踊らされている女がいた。あの情熱的なステップ…あれは、**情熱ダンサー『フラミン』**だ!」
「なんだと…!?」 カナリアンの物語を知るレオたちは、戦慄しました。 (過去のブログ記事:第9話、第10話参照)
かつて、互いの才能に惹かれ合い、最高のパートナーとなったはずの芸術家コンビが、今、魔王軍の砦で、最も屈辱的な形で「再会」させられていたのです。 カナリアンは、目の前で踊らされるフラミンの姿に、絶望と悲しみの歌を奏でさせられ、フラミンは、そのカナリアンの切ない歌声に合わせて、涙ながらに踊り続けている…。
クロネコウィッチが、吐き捨てるように言いました。 「…趣味が悪い。あの影のヤツら、二人の絆を利用してるんだ。カナリアンの悲しみの歌声で、この砦の兵士たちの士気を高め、同時に、呪いの力を増幅させている。あれは、ただの牢獄じゃない…呪いを振りまく『装置』だ」
新たな任務:潜入、そして救出へ
レオは、氷壁の砦を睨みつけ、静かに、しかし力強く宣言しました。 「任務変更だ。我々は、この砦を突破する。そして、二人を必ず救い出す」
「待ってました!」とフェネック。 「任せとけ!砦の真下、氷壁の亀裂から、汚水を排出する水路を見つけてある。クロネコウィッチの魔法で水の流れを一時的に凍らせれば、侵入できるはずだ!」
「決まり、だな」 コンすけが、魔法剣の柄に手をかけます。
「あいつらの、あんな悲しい顔…私、絶対に許せません!」 アルパカメイジの瞳に、いつもの優しさとは違う、強い決意の光が宿ります。
「ふん。どっちでもいいが、あの歌声は耳障りだ。さっさと止めてこい」 リルドラはそう言いながらも、その槍の穂先は、まっすぐに砦を見据えていました。
魔王軍の最初の砦に囚われた、二人の芸術家。 レオたち6人の仲間たちは、彼らを救い出すため、凍てつく闇の中、秘密の潜入作戦を決行します。
次回、「異世界転生キャラたちの冒険 第7話:潜入、氷の牢獄。再会は最悪の舞台で」 彼らは、厳重な警備をかいくぐり、二人を救い出すことができるのか? どうぞ、お楽しみに!

