テラ・アニマの物語へ、ようこそ。 前回、レオたち一行は、森の守護者ウルフマスター、ホークアーチャーと協力し、大森林エルドリアの「聖なる泉」を汚染していた魔王の先兵を撃退しました。
呪いの元凶であった「黒い氷の欠片」は砕け散り、泉はゆっくりと、しかし着実に、その清らかな輝きを取り戻し始めています。しかし、魔王の影が残した「もう遅い」という不吉な言葉が、一行の心に重くのしかかっていました。
「……ここは…?」
聖なる泉のほとりで、アルパカメイジの懸命な治癒魔法を受けていた小さな竜騎士が、うめき声と共に、ゆっくりと目を開きました。 「……ボクは…確か、泉の力を…」
「気がついたかい!?」 真っ先に顔を覗き込んだのはフェネックでした。「大変だったんだよ!あんた、悪い影のヤツに騙されて、呪いをまき散らす『電池』にされてたんだ!」
「なんだと…?」 リルドラが、まだ朦朧とする頭で状況を理解しようとしていると、コンすけが冷静に事実を告げます。 「その通りだ、竜騎士殿。君の強さへの渇望が、魔王の先兵に利用された。君のプライドが、呪いの力を増幅させていたんだ。…まあ、おかげで呪いの発生源を特定できたわけだが」
「利用…された…? ボクが…?」 リルドラの顔が、困惑から、やがて屈辱へと変わっていきます。
「…あなたを救ったのは、彼です」 アルパカメイジが、静かに泉のほとりに立つ騎士を指差しました。
リルドラの視線が、まっすぐにこちらを見つめるレオと交差します。 自分が「大陸一」の称号をかけて、一方的にライバル視していた相手。その相手に、まんまと騙された挙句、命まで救われるという、最大の屈辱。
リルドラは、わなわなと震えながら、よろめきつつ立ち上がりました。
誇りが砕かれた、竜騎士の決意
「……騎士レオ!!」
彼が次に取る行動を、パーティの誰もが固唾を飲んで見守りました。激昂して襲いかかってくるか?あるいは、恥じて逃げ去るか?
しかし、リルドラは槍を構える代わりに、拳を強く握りしめ、地面を殴りつけました。 「屈辱だ…!このボクが、まんまと騙され、あまつさえ、貴様に…貴様に命を救われるとは!!」
「リルドラ殿…」
「勘違いするなよ、騎士! これで貴様に恩を売ったつもりなら、大間違いだ!」 リルドラは、憎悪とも悔しさともつかない、燃えるような瞳でレオを睨みつけます。
「この借りは、必ず返す。だが、貴様のような騎士に借りを作ったまま、最強を名乗るなど、ボクの誇りが許さない!」
彼は、呪いの欠片が消え去った祭壇を睨みつけ、そして、コンパスが指し示す「北」の空を仰ぎ見ました。
「あの影のヤツ…そして、その主である『魔王』とかいうヤツ…! ボクをコケにした罪は、万死に値する! あいつらを、このボク自身の手で叩き潰す!」 彼は、再びレオに向き直ります。 「騎士レオ!貴様への借りを返すためだ! ボクも、その『北』とやらへ同行させてもらう!」
「ええっ!?」「仲間になるってこと!?」 フェネックが喜びますが、リルドラは「ふん!」とそっぽを向きます。 「仲間などではない! 貴様らが、ボクより先に魔王を倒すことなど、万が一にもあってはならないからだ! ボクの獲物を、横取りさせるわけにはいかないからな!」
「…それでいい」 レオは、その小さな竜騎士の、あまりにも誇り高い決意を受け止め、静かに頷きました。
こうして、パーティで最も素直じゃない(かもしれない)6人目の仲間が、旅に加わったのです。
新たなる旅路へ
森の守護者であるウルフマスターとホークアーチャーは、汚染された森の浄化と、残党の掃討のために、エルドリアに残ることを決めました。 「騎士レオよ、この先は、魔王の御膝元。もはや森の異変とは比べ物にならぬ、本当の脅威が待っているだろう。その剣、決して曇らせるな」 森の王の言葉を背に受け、6人となったパーティは、大森林エルドリアを後にします。
森を抜けると、空気は一変しました。 緑は途絶え、草木も凍てつく、荒涼とした大地。空は低く垂れ込め、遥か北の地平線には、まるで世界を拒絶するかのような、巨大な氷壁がそびえ立っていました。
魔王の影が残した「もう遅い」という言葉。 アルマジロラクルの予言した、「凍てついた大地」。
一行の、本当の試練が、今、始まります。次回、「異世界転生キャラたちの冒険 第6話:氷壁の砦と、囚われの歌声」 北の地への入り口を塞ぐ、魔王軍の最初の砦。そこで彼らが耳にする、意外な人物の歌声とは…? どうぞ、お楽しみに!

