テラ・アニマの物語へ、ようこそ。 前回、立ち塞がる巨大な氷の壁――魔王軍の結界を、突如現れた拳法家**「くまモンク」**が、練り上げた気の一撃で見事に粉砕しました。
「ふん、修行の邪魔をする不届き者がいると聞いて来てみれば…。魔王の城とは、良い度胸試しになりそうだ」
ストイックな求道者であるくまモンクを仲間に加え、総勢9人となったレオたち一行。 崩れ落ちた氷塊を踏み越え、彼らはついに、魔王が支配する北の最深部へと足を踏み入れます。
死と静寂の荒野
結界の向こう側に広がっていたのは、生命の気配が完全に絶たれた、死の世界でした。 地面は黒く干上がり、枯れた木々が墓標のように立ち並んでいます。空は常に鉛色の雲に覆われ、太陽の光さえも、ここでは弱々しくしか届きません。
「空気が…重いね」 フェネックが、いつもの軽口を叩く元気もなく呟きます。 「ああ。呼吸をするだけで、体力を削られていくようだ。みんな、離れるなよ」 レオが警戒を促し、一行は慎重に進みます。
遥か彼方には、不気味な瘴気をまき散らす**「影の城」**がそびえ立っています。目指す場所ははっきりしていますが、そこへの道のりは、これまで以上に険しいものになることを、全員が肌で感じていました。
誰かに、見られている
荒野を進んで数時間が経った頃。 先頭を歩いていた魔法剣士コンすけが、ふと足を止めました。
「……おかしいな」 「どうした、コンすけ?」 「さっきから、妙な視線を感じるんだ。魔物のような殺気じゃない。もっと冷たくて、鋭い……観察するような視線だ」
クロネコウィッチも頷きます。 「私も感じる。魔法的な探知結界には引っかからない。…相当な手練れだよ」
リルドラが槍を構え、空を睨みますが、そこには淀んだ雲が流れるだけ。 魔王軍の斥候か? それとも、見えざる罠か? 緊張が走る中、その「影」は、音もなく彼らの目の前に現れました。
闇に溶ける訪問者
「……流石はアストリアの騎士と、その仲間たち。これほど近づいても、気配を悟られるとはな」
岩陰から、まるで影が実体化したかのように、一人の男が姿を現しました。 顔の半分を布で隠し、装束に身を包んだその姿。その瞳は、鷹のように鋭く、一切の感情を映していません。
「貴様、魔王軍の刺客か!」 くまモンクが拳を構えて前に出ます。
しかし、レオがそれを制しました。 「待ってくれ! その装束…以前、文献で見たことがある。東方の大国、ヒノモト皇国の……」
「いかにも。名は**『ホークアイ』**。以後、お見知りおきを」
男は静かに名乗りました。 ヒノモト皇国の忍び、ホークアイ。魔王軍とは敵対するはずの彼が、なぜこんな敵地のど真ん中に?
「我ら忍びの任務は、情報収集。この地で何が起きているのか、影から探るために潜入していた」 ホークアイは淡々と言葉を続けます。 「お主らが派手に結界を壊してくれたおかげで、城の警備が厳重になりすぎてな。これ以上の単独行動は骨が折れると思っていたところだ」
共通の敵、そして新たな情報
「まさか、手を組もうって言うのかい?」 フェネックが疑わしげに尋ねると、ホークアイは少しだけ目を細めました。
「利害は一致しているはずだ。それに……」 彼は視線を、影の城の方角へと向けます。 「城には、私の同胞も捕らえられている可能性がある。猪突猛進な、あの侍がな」
「侍……まさか、シバマル殿か!?」 レオが驚きの声を上げます。
「ああ。奴は真正面から城門を突破しようとして、消息を絶った。……馬鹿な奴だ」 口では悪態をつきながらも、その声には微かな焦りが滲んでいました。
「決まりだね」 レオはホークアイに手を差し伸べました。 「我々の目的は魔王の討伐。そして、囚われた仲間がいるなら、助け出すのは当然だ」
ホークアイは一瞬、レオの手を見つめ、ふっと短く息を吐くと、その手を取りました。 「……承知した。影の案内人が必要なら、私が務めよう」
魔王軍でも、魔物でもない。 思いがけず現れたのは、最強の情報屋にして、頼れる(?)忍びでした。 そして明らかになった、忠犬サムライ「シバマル」の危機。
10人となった一行は、ホークアイの導きで、影の城への侵入ルートを探ります。
次回、「異世界転生キャラたちの冒険 第12話:潜入!地下水路と、迷宮の番人」 ホークアイが示したルートは、城の地下に広がる広大な迷宮でした。 そこで彼らを待ち受ける、一つ目の難関とは? どうぞ、お楽しみに!

